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  • 執筆者の写真天野圭介

貴船神社 御神木の桂、欅の枝おろし

4月の下旬頃、京都府貴船神社の御神木である桂、欅(けやき)の枝おろしをさせて頂きました。


全国に450か所ほどある貴船神社の総本宮であり、京都市中を潤す鴨川の源流に位置する貴船神社。貴船神社の起源については、貴船大神が御鎮座することになった伝説が社記に残されており、「国家安穏 万民守護のため 太古 丑の年の丑の月の丑の日に、天上より貴船山中中腹 鏡岩に天降れり」とあり、現在丑の日が縁日とされている所以でもあります。


非常に歴史の古く神聖な境内の中に桂を始め欅、杉といった巨古木が静かに、そして力強く息づいています。1本の木の持つ力の凄まじさ、そして森として全体で生きる広がり、生氣の強さは圧巻です。夏場のシーズンには1日で1,000人を超える人々が訪れるという聖地。この地より湧き出るエネルギーの強さを感じます。


その聖地も近年の開発行為や治山、治水事業、コンクリートやアスファルト舗装の影響などから段々と苦しい環境に変化していきていることが見受けられます。沢筋には堰堤や観光客向けの桟敷が築かれ、土砂が溜まって沢が浅くなり、やがて谷の詰まりの影響が山の斜面全体に広がりを見せています。台風の大風で谷あいの杉桧が軒並み倒され、危険を感じた人々は倒木や立ち木を次々と伐採し、更に強固な擁壁を立ち上げて家々を守ろうとしています。最近では台風の大型化、記録的な降水量など、異常気象と呼ばれるものばかりに目が向けられることが多いのですが、果たして本当に原因はそれだけなのでしょうか?人々は木々がなぎ倒される様を目の当たりにし、「木は倒れるもの」「木は危ない」という理由からこれまでに類を見ないほどの伐採行為が全国至る所で繰り広げられています。本当に理由は大風や大雨だけなのでしょうか?


この貴船神社で境内の環境改善作業をおこなっている私の仲間のWAKUWORKS、そして大地の再生関西メンバーは、水と空氣の循環する環境づくりに焦点を当て、境内の木々がしっかりと根を張り大地を掴み、安定感と復元力の強い環境づくりに取り組んでいます。地上と地下を行ったり来たりしながら循環している水と空氣、そして菌糸などの働きに目を向け、それが有機的につながり一体として機能する様、様々な有機物や無機物を組み合わせ、境内の環境を整えています。


1日に1,000人を超える人々の往来は大地に凄まじい踏圧をかけ、地表面を固めてしまいます。すると地表に降った雨は大地に浸透することができない量が多くなり、泥と共に地表面を流れ出します。地表の腐葉土層は流されて細り、締め固められて乾燥した大地は樹の根の呼吸を妨げるようになります。すると木々は弱りだして枝を枯らし、なんとかその環境の中で自分を適応させようと樹勢を落とし、自分自身の活動を縮小化していきます。その様子を見た人々は「枝が落ちると危ない」、「伐採した方がよい」と心配しだし、無残にもこれまでこの地を支え、繫栄させてきてくれた立役者である木々が切られていきます。


また流れだ出た土砂は堰堤や砂防ダムの中に堆積し、下流まで流れ出ることができずに谷筋を埋め、山全体の空氣と水の湧き出し口である要の谷筋を塞いでいきます。すると山全体の地下の水の流れが滞り、淀んだ水の影響から木々の根が浅くなり、大風が吹くと根こそぎ倒れてしまうという現象が発生していると私は考えています。その他にも生活排水や下水など、様々な要因が重なり合って今の状態になっているのですが、砂防堰堤や擁壁などの手立てを打った場合、どのような結果を招いているかをしっかりと自然の反応から読み解き、検証すべきだと思います。データ上の話だけではなく、五感で感じる感覚も大切に。


さて、今回は貴船神社境内に生きる桂の御神木(樹齢推定400年)、そして鳥居の裏に生きる欅の枯れ枝降ろしをさせて頂きました。桂の木は以前から段々と樹勢が弱り始めていた為、枯れてきた大枝を数本切った跡が残っています。それにより樹形のバランスが崩れ、それを補うように周辺の枝が伸び、隠しているようでした。仲間達の環境改善作業のお陰で以前より樹勢が上向きに変わっており、私が登った頃には綺麗で柔らかな新芽に包まれていました。土中に溜まっていたアクが木のてっぺんより抜け出てきている様子です。入口が狭かった為17mの高所作業車を使って途中まで接近し、そこから御神木に飛び移って作業開始。樹高は30mほどありそうです。枯れ枝も非常に重く、しかも夕方からは雨予報。限られた時間での勝負となりましたが、無事他の枝や幹を傷つけることなく作業終了。欅は電線付近の枝が伐採されそこから腐りが入っていた為、腐りを除去するように切り詰めました。


私がアーボリストとしての活動で大切にしていること。それは人々に木々の尊さ、そしてその有難さを思い出して欲しい、そして木々の声なき声を人々に代弁したい、大切な木々を残していきたい、という気持ちです。木々に触れ、木々といつも一緒にいると、木って言葉はしゃべらないけど結構おしゃべりなんですよ(笑)。いろんなことを教えてくれます。これからは木を切るのではなく、木を植え氣を養う時代です。今回はアーボリスト冥利に尽きる有難いお仕事でした。WAKUWORKS、大地の再生関西チーム、そして貴船神社の神々と人々に感謝!


(樹齢推定400年の桂の枯れ枝おろし)


(貴船神社鳥居付近の欅枯れ枝おろし)




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